当社設立の昭和44年当時は、断裁機や工作機械などに自動で任意の位置を決め、それを記憶し読み出す装置というものがまだ技術的にも確立されておらず、しかもわずかに実用されているものも極めて高価でした。ICも高価で種類も少なく全部トランジスタですので、装置はコンパクトなものにはなりません。それでも、自動位置決め装置に対する一般工業界、産業界の要望は日増しに高まっていったのです。
設立以前に、そうした事情を察知した私たちはたまたま磁気録音機に携わっていた関係から、磁気記憶装置による位置決め装置を開発してみることに着眼しました。それがいわば当社の始まりです。以来開発志向企業の土壌が培われ、今日どうにか形を成しつつある当社の3本柱も磁気記憶装置を根にして枝葉が伸びたものなのです。人に例えれば頭脳に相当する磁気式任意位置記憶読み出し装置(その後マイコン制御化)を第一の柱に、そこにさらに精度を増すために開発された手足に相当するサーボドライバーを第二の柱に、そしてより確実性を求めて開発に望んだ目に相当する光電子型センサーを第三の柱に、ミヤケ電子工業そのものも企業としてしっかりと地に足を据えました。
磁気記憶装置の開発が当社のスタートと紹介しましたが、当初はトラック数も1つでそれが行ったり来たりしているだけのものでした。それでも要望はとどまるところなく、それに負けじと当社の開発精神も高揚の度を増していく中、8トラック、16トラック…と倍々に、百数十トラックにまで伸びていきました。そして、その限りない要望に答えていく頭脳として、《ミヤケ製》ワンボードコンピュータMYKシリーズが誕生ました。当時の磁気記憶装置が数年後には、マイクロコンピュータを搭載して記憶数6桁1000ポイントに、さらに4000ポイント、8000ポイントへと、とどまることなく伸びていっています。
《ミヤケ製》ワンボードコンピュータを商品化した当時は、ワンボードコンピュータはICメーカーのものしかなく、そのメーカー系列のICで設計されたもので決して使いやすいものではありませんでした。そこで小さな会社の小回りがきくというメリットを生かして、メーカーの枠を越えた使うものにとって使いやすいボードをという発想から、独自の《ミヤケ製》のボードを開発し商品化いたしました。人の頭脳に相当する部分ですので、より早くより正確にそしてより多くの事が出来るようにという要望に答えて、クロックのスピードアップやメモリーの容量アップそしてシリーズの品揃えと充実をはかってまいりました。現在、十数年の実績をもとに《ミヤケ製》オリジナルバスボードとしての評価と信頼をいただくまでになっています。
また、その間に蓄えてきたマイコン制御の技術力を色々な範囲に応用しております。当社のスタートであった1軸の位置決めから、3軸、5軸、そして12軸へ、さらには30+αまでの多軸制御というところまできています。またユニラインシステム(多重伝送システム)や、回転軸の比率制御や同期運転、電話回線による遠隔監視用端末装置等々。当社技術力の証明であり開発力の自信となっています。
ところで、磁気式任意記憶読み出し位置決めというのは人の頭脳の部分ですが、それだけでは十分な精度は求められません。モーターをコントロールする装置が必要になります。当社設立当時はこれも優れたものがなく高価でした。そこで自社でという発想のもとに、試行錯誤を重ねそれを使命と考えて開発したのがDCモーターのサーボドライバーです。これで位置は正確に決まります。いわばこれも当社の一つの顔です。産業用、工作ロボット用に期待が集まる中で当社で蓄積されたサーボ技術とノウハウは、1軸、2軸、3軸のドライバーにつながり、さらにPWM方式のサーボを経て現在DCサーボドライバー技術もCVCF(制止型交流電源)に移っております。同業他社にその追随を許さず、一流大手ユーザーの評価と信頼を勝ちとるまでに育っております。
平成1年2月に地下無重力実験装置のリニアモーター部のパワーコントローラ(PWM方式)を住友電気工業様より当社に発注いただきました。これは、北海道の炭坑跡の立て坑を利用して巨大なカプセルを落下させ、その中で無重力をつくるという国内外から注目を集めている実験です。この地下無重力実験施設の主要設備の開発、製作に石川島播磨重工業様が参画されました。このような世界的レベルの実験に当社も加えていただきました。これは、当社のパワーコントローラの経緯を認めていただいての発注であります。その後も種々スイッチングの速度が早いパワーコントローラについて注文をいただいております。 |
当初、当社の位置決め装置が特にその成果を発揮した断裁機に、その後紙の二枚送り防止の要求が出てきました。それまでは機械的に厚みで判断していたのですがそれでは不確実でした。そこで開発したのが超音波型、光電子型のセンサーでした。
ところで、この超音波関係のセンサーは当時はただ単に紙が一枚か二枚かを見るだけのものでしたが、現在は高精度な距離センサー等に発展しております。同時に、河川の砂等の盗難防止や安全装置等に活用され用途の広がりを見せております。
一方、光電子型センサーには極細糸等の検出機(例10デニール)があります。
また、用途の広がりから一つの柱として独立させてきておりますマイクロウェーブ関係のセンサーとして、布の含水量の検出(染色工程において布に含む染液の分布が均一でないと上手く染まりません。布の各部の含水量の検出が正確にできると均一化することが出来ます。また、当然濡らすと乾燥させる必要があります。その乾き具合の監視に使用。)、粉末洗剤の水分量の検出、タバコの葉の含水量の検出、瓦を焼く前の含水量の検出、そして製鉄関係の溶鉱炉等で高温の鋼材の有無の検出に。また、導波管のみの利用など色々な分野へ広がっています。
以上紹介した三本柱それぞれが、少しずつではありますが確実にユーザーの評価と信頼を得て育っております。それぞれの強化を図るなかでさらなる枝葉が伸びて五本柱にと、サーボ部門から電源関係(CVCF)を、センサー部門から上記のようにマイクロウェーブ関係を独立させ、競合の少ない独自の分野でより専門的にという生き方で当社の存在をよりユニークに、産業界にとってより価値のあるものにしようと願っているのです。
さらに、従来の”一品料理”的な分野でユーザーに貢献してきた企業体質から、今日まで蓄積されてきたノウハウによりある程度見込み生産の可能な企業体質に移り変わりつつあります。これからも、現在いただいている評価をもとに営業面での強化を図っていこうと考えております。
「好きこそ物の上手なり」の例えを自ら持ち出し当てはめることに多少おこがましさはあるものの、当社の技術は何処を真似何処に学んだものでもなく、自らの熱意と根気でさらに英知で生み出したものです。今後もそうした基本姿勢を貫いて、「ミヤケならどんな難題も形にする」との評価と信頼をいっそう高く幅広く得られるよう社員一同努力を続けてまいります。